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私のキャスティング観
その5
キャスティングの説明において「加速」や「加速度」という言葉がよく使われます。
加速、加速度は速度が時間の経過とともに上昇すること、そしてその度合いの数値を指し「m/secの二乗」という単位です。
フライキャスティングでラインループが出来る原理やロッドの曲がる原理を説明するのに「加速」なしにはありえません。
キャスティングにおける加速を考える上で、ラインそのものの加速運動、ロッドチップの加速運動と、ロッドのバット部分の加速運動あるいはキャスターの腕の加速運動をそれぞれ明確に分けて考えないと混乱が 生じます。
ロッドは曲がるものであって曲がらない棒切れの場合の原理と錯覚した説明にも陥りやすいものです。

ロッドチップの動きについて考えてみてください。
先端のトップガイドの部分についてと考えてもいいです。
チップが移動してラインが追従します。その時、スピードが上昇を続ける加速状態にないとラインの空気抵抗による浮力が生まれず引力による下降がループを崩してしまいます。
チップが加速から減速に転じた時にラインはチップを追い越しループが出来ます。
ロッドチップの移動が加速と減速の状態になることによってラインのループができるわけです。
加速から減速に転じてループが発生した時点でのトップガイドの位置とトップガイド停止の位置との距離がループ幅となります。因みにテーリングはそれぞれの位置が上下逆になると発生します。

加速でもうひとつ考えなければならないのはロッドの曲がりについてです。
基本的にロッドが曲がるのはラインの質量による抵抗があるからです。
ところがラインは追従可能な浮遊状態にありますのでロッドが曲がるためには加速状態を作らなければなりません。
つまり、チップが加速状態にあるために曲がるのであって等速で動けばロッドは曲がりません。
ただし、ロッドには自重があってロッド自体の慣性によって曲がる要素も複合しています。
特にバンブーロッドなどはロッド自重の慣性による曲がりが大きく、キャスティングの要素として大きな影響があります。

どの部分の加速現象を求めるためにどの部分を動作させるかと言う理解は重要ですがそこがキャスティングの最もむずかしいところかもしれません。

フライキャスティングは様々な物理的要素が複雑に組み合わされています。
ラインの空気力学的な要素、ロッドの弾性特性の要素、キャスターの人間工学的あるいは運動生理学の要素など、それぞれは第一線の専門的研究の対象となるほど難しいものがあります。
キャスティングを論じる時に専門的な解析ができる知識や検証できる環境があれば素晴らしいことですが、 すべてをカバーできる人はいないでしょう。
ひとつひとつの現象をできるだけシンプルな考え方に置き換えて解りやすい理論構成を目指すことが現実的かもしれません。

 

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